今回は、少し産業廃棄物のお話から離れて、建設業許可について書いてみたいと思います。
建設業許可の取得は、多くの事業者様にとって、自社の信用力を高め、より大きな工事を受注していくための大きなステップです。
しかし、実際に申請しようとすると、
「自分のこれまでの経験で要件を満たしているのか?」
「昔の勤務経験は実務経験として使えるのか?」
「事務所は自宅でも大丈夫なのか?」
など、手引きを読むだけでは判断しにくいポイントがたくさん出てきます。
そこで今回から何回かに分けて、東京都で「電気工事業」の建設業許可を新規取得する場合を例に、実務上のポイントを見ていきたいと思います。
第1回となる今回は、許可取得の土台となる「営業所の要件」と「人的要件」についてです。
1.営業所の要件 単なる「登記上の住所」だけでは足りません
建設業許可における営業所は、単に法人登記上の本店所在地になっていればよい、というものではありません。
実際にその場所で建設工事の請負契約などに関する営業活動を行うことができる「営業所としての実体」が必要になります。
例えば、
・外部から来客を迎えることができる
・見積りや契約などの業務を行える
・電話、机、書類など業務に必要な設備がある
・他の法人や居住スペースなどと明確に区分されている
・その場所を営業所として使用する権限がある
といった点が重要になります。
自宅を営業所として使用するケースもありますが、居住部分との区分や、実際に事務所として使用していることが分かる状態になっていることが大切です。
また、賃貸物件の場合には、賃貸借契約の内容から事務所として使用できることを確認する必要が生じる場合もあります。
プレハブ事務所だから必ず認められない、というわけではありませんが、営業所としての実体をきちんと説明できることが重要です。
一方、実体のないバーチャルオフィスでは、建設業法上の営業所として認められない可能性がありますので注意が必要です。
2.人的要件① 経営業務の管理責任者に関する要件
建設業許可では、建設業の経営について一定の経験を持つ人物が、常勤役員等として事業者の中にいることが求められます。
従来「経営業務の管理責任者」、いわゆる「経管」と呼ばれてきた要件です。
代表的なルートの一つが、
「建設業に関し、5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有すること」
です。
ここで重要なのが、現在は申請する建設業種と、過去に経営経験を積んだ建設業種が同じである必要はないという点です。
例えば、
「内装仕上工事業で5年以上の経営経験がある」
という方が、
「電気工事業」の建設業許可を申請する際に、その経営経験を活用できる可能性があります。
また、当然ながら「常勤」であることも重要です。
原則として、その営業所において休日などを除き、一定の勤務計画のもと継続的に職務に従事していることが求められます。
名前だけ役員になっている、実際にはほとんど会社に来ていない、といった状態では問題になります。
3.人的要件② 営業所技術者等と電気工事の実務経験
もう一つの大きな人的要件が、営業所に置かれる技術者です。
従来「専任技術者」と呼ばれてきたもので、現在の制度上は「営業所技術者等」と整理されています。
電気工事業の場合、代表的なルートとして、
1.指定学科を卒業し、一定期間の実務経験がある
2.10年以上の電気工事の実務経験がある
3.一定の国家資格等を持っている
といった方法があります。
実務上は、資格を利用して要件を満たすケースも多くあります。
電気工事業で代表的なのが「電気工事士」です。
ただし、同じ電気工事士でも、資格によって扱いが異なります。
第一種電気工事士
第一種電気工事士については、資格により電気工事業の営業所技術者等の要件を満たすことができます。
第二種電気工事士
第二種電気工事士の場合には、免状を取得しているだけでは足りず、免状交付後3年以上の電気工事に関する実務経験が必要になります。
ここが、実務上かなり重要なポイントです。
4.現場のリアル 「アルバイト経験」は実務経験として使えない
例えば、
「第二種電気工事士を持っています。昔、親戚の電気屋で3年間アルバイトをしていました」
というご相談があったとします。
本人としては、
「実際に電気工事をやっていたのだから、3年間の実務経験として使えるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、東京都の建設業許可申請において、アルバイトとして働いていた期間を、そのまま営業所技術者等の実務経験として使うことはできません。
建設業許可で求められる実務経験は、
「実際に工事を手伝っていた」
という事実だけでは足りません。
必要な期間、継続して実務に従事していたことを、客観的な資料によって証明できる勤務実態が必要になります。
そのため、当時の健康保険や厚生年金などの加入状況をはじめ、勤務実態を確認できる公的資料が重要になります。
「昔、確かに電気工事をやっていた」
「親戚の会社だから間違いなく働いていた」
という本人の記憶や説明だけでは、建設業許可申請上の実務経験として証明することはできません。
さらに電気工事の場合には、誰が、どのような資格で、どの事業者のもとで工事に従事していたのかについても確認が必要になります。
電気工事業法上必要な登録や届出をしている事業者での経験なのか、という点も重要です。
このあたりは、建設業許可の中でも実務経験の証明が難しくなりやすい部分です。
まとめ
建設業許可は、申請書を作れば取得できるというものではありません。
その前提として、
・営業所としての実体があるか
・経営経験を持つ常勤役員等がいるか
・電気工事について必要な資格または実務経験を持つ技術者がいるか
・それらを客観的な資料で証明できるか
という点を、一つずつ確認していく必要があります。
特に重要なのが、
「要件を満たしていること」と
「要件を満たしていることを証明できること」は別問題
という点です。
実際には経験があっても、過去の資料が残っていなければ、申請上その経験を使うことが難しくなるケースがあります。
ここが建設業許可実務の難しいところであり、同時に行政書士の腕の見せどころでもあると思います。
次回は、
「その経営経験・実務経験を、東京都に対してどう証明するのか?」
について見ていきます。
なぜ昔の請求書や注文書、契約書、そして通帳まで確認する必要があるのか。
建設業許可申請における「過去の資料整理」の重要性について、実務の視点から解説していきたいと思います。
