前回は、「事務所」と「専任技術者」の要件について解説しました。
今回は、
「会社としての工事実績をどう証明するのか」
そして、
「経営業務の管理責任者の経験をどう証明するのか」
について見ていきます。
建設業許可の申請では、
「昔から電気工事をやっています」
「自分は長年、会社を経営してきました」
と説明するだけでは足りません。
東京都の審査では、その経験を裏付けるための客観的な確認資料が必要になります。
ここが、実務上かなり重要なポイントです。
1. 別事業と並行して電気工事をしていた場合、どう証明する?
例えば、ある会社がもともとコンビニなど別の事業を経営していたとします。
しかし、それと並行して電気工事も行っており、実際に工事代金の売上もあった。
このような場合、
「会社が本当にその期間、電気工事業を行っていたのか」
をどのように証明するのでしょうか。
実務では、請求書や工事台帳などの資料と、実際の入金が確認できる通帳などを照合していきます。
例えば、
「この請求書の工事代金が、この日に会社口座へ入金されている」
ということを、一件ずつ確認していきます。
請求書の金額と通帳の入金額を対応させ、
①の請求書 → ①の入金
②の請求書 → ②の入金
というように整理します。
通帳の該当する入金部分にマーカーを付けるなどして、
審査担当者が見たときに、請求書と入金の関係がすぐに分かるようにする
ことが大切です。
2. 東京都には実績証明の「救済ルール」がある
ここで、
「5年間の経験を証明するなら、毎月すべての工事について請求書と通帳をそろえなければならないの?」
と思われる方もいらっしゃるでしょう。
でも、東京都には実務上非常に助かる確認ルールがあります。
救済ルール① その月は「1件」確認できればよい
例えば、ある月に電気工事を20件、30件行っていたとしても、その月のすべての工事を洗い出す必要はありません。
その月について、1件の請求書等と、それに対応する入金記録が確認できれば、その月の実績確認資料として扱うことができます。
つまり、
「この月に建設工事を行っていた」
ということを確認するために、その月の代表的な1件を拾い出せばよいわけです。
これは、数年間の経験を立証するときには非常に大きな違いです。
救済ルール② さらに途中の月を省略できる
さらに重要なのが、
「経営経験・実務経験期間確認表」
を使用した場合の取扱いです。
請求書等の確認資料について、一定の間隔で工事実績を確認できれば、その間の月の資料を省略することができます。
例えば、
1月の請求書・入金資料
と
4月の請求書・入金資料
が確認できれば、
2月、3月分については、別途請求書等を提出しなくてもよい
という取扱いがあります。
つまり、
5年間の経験を証明するからといって、
60か月分すべてについて毎月1件ずつ請求書を探す必要はありません。
一定の間隔で、確実に請求書と入金が一致する工事を拾い出し、確認表に整理していけばよいのです。
このルールを知っているかどうかで、資料集めの負担は大きく変わります。
3. 経営業務の管理責任者の経験はどう証明する?
次に、建設業許可の重要な人的要件である、
経営業務の管理責任者等
について見ていきます。
典型的なケースでは、
建設業に関して5年以上、経営業務の管理責任者としての経験があること
を証明していきます。
では、その5年間の経営経験をどう確認するのでしょうか。
まず確認するのが、
会社の登記事項証明書です。
現在の履歴事項全部証明書だけでは期間を確認できない場合には、閉鎖事項証明書など過去の登記記録も確認します。
そこから、
- 取締役
- 代表取締役
などとして在任していた期間を確認します。
そして、その期間が必要年数を満たしているかを確認していきます。
4. 「役員だった」だけでは足りない
ここが重要です。
登記簿を見て、
「5年間取締役でした」
ということが分かったとしても、それだけで、
「5年間、建設業の経営業務を行っていた」
と確認できるわけではありません。
その会社が、その期間に実際に建設業を行っていたことも立証する必要があります。
そこで、先ほど説明した、
請求書や工事台帳などの資料
と、
通帳などの入金資料
を組み合わせます。
つまり、
登記簿で経営者としての在任期間を確認する。
そして、
その在任期間中に会社が建設工事を継続して行っていたことを、請求書等と入金記録で確認する。
この二つを組み合わせることで、
「この方は、この会社で、実際に建設業の経営に携わっていた」
ということを立証していきます。
建設業許可は「経験がある」だけではなく「証明できる」ことが重要
建設業許可申請では、
「実際に経験があること」
と同じくらい、
「その経験を書類で証明できること」
が重要です。
昔から工事をしていた。
長年、会社を経営していた。
それ自体は事実であっても、確認できる書類が残っていなければ、申請では大きな問題になります。
一方で、東京都には、
1か月につき1件の実績確認
さらに、
一定の間隔で確認できれば途中月の資料を省略できる取扱い
があります。
こうしたルールをうまく活用しながら、
- 請求書
- 工事台帳
- 通帳
- 登記事項証明書
- 過去の登記記録
などを整理し、
いつ、誰が、どの会社で、どのような建設業の経験を積んできたのか
を一本の線につなげていくことが大切です。
一見すると気の遠くなるような作業ですが、
どの資料を使えばよいのかを見極めれば、提出資料をかなり絞り込むことができます。
ここが東京都の建設業許可申請における、実務上の大きなポイントです。
次回は、これらの要件を踏まえながら、具体的な申請書類や財務諸表について見ていきたいと思います。
お楽しみに!
