ヤード条例の変遷年表
―自動車ヤード規制からスクラップ・再生資源物の屋外保管規制へ―
盗難自動車や自動車部品の不正な解体を防ぐために生まれた「ヤード規制」は、その後、金属スクラップなど有価物・再生資源物の屋外保管問題への対応へと広がりました。都道府県・市町村が施行してきたヤード条例・スクラップヤード条例を、施行日順に整理しています。
ヤード条例・スクラップヤード条例 一覧(施行日順)
全国の都道府県・市町村が施行してきたヤード条例を、施行日の古い順にまとめました。自動車ヤードを対象とする条例(分類A)と、金属スクラップ等の再生資源物の屋外保管を対象とする条例(分類B)に分けて掲載しています。
長野県飯田市「飯田市環境保全条例」(屋外保管規制部分)
飯田市環境保全条例は市の総合的な環境保全条例ですが、改正により使用済物品等の屋外保管に関する規制が盛り込まれ、2012年1月1日に改正施行されました。金属スクラップなどの再生資源物という言葉が一般化する以前から、使用済物品の野積みを自治体が独自に規制していた点で、後年のスクラップヤード条例の先駆けと位置づけられます。
分類:B|スクラップ・再生資源物の屋外保管規制型千葉県「千葉県特定自動車部品のヤード内保管等の適正化に関する条例」
自動車や自動車部品を取り扱うヤードを対象に、事業の届出や保管方法の適正化を求める条例です。盗難車両や不正な自動車解体への対策という性格を持ち、都道府県が制定した自動車ヤード条例の代表的な初期の事例として知られています。以降の各地のヤード条例のひな型的な存在になりました。
分類:A|自動車ヤード規制型兵庫県三木市「三木市におけるヤード内保管等の適正化に関する条例」
都道府県ではなく市が単独で制定したヤード条例です。県による包括的な規制がない地域でも、自治体が独自にヤード内の自動車部品保管の適正化に取り組んだ事例であり、市町村レベルでのヤード規制の広がりを示しています。
分類:A|自動車ヤード規制型茨城県坂東市「坂東市特定自動車部品のヤード内保管等の適正化に関する条例」
千葉県条例と同様に、特定自動車部品のヤード内保管を届出制で管理する市条例です。茨城県内では市町村レベルの条例が先行し、翌2017年の茨城県条例制定につながる土台の一つとなりました。
分類:A|自動車ヤード規制型茨城県「茨城県ヤードにおける自動車の適正な取扱いの確保に関する条例」
県内市町村の条例を経て制定された都道府県条例で、規制の担い手を公安委員会(警察)とした点が特徴です。ヤード内自動車解体者に対して、届出義務、取引相手の確認義務、書類保存義務などを課しており、その後の各都道府県のヤード条例の基本形の一つとなっています。
分類:A|自動車ヤード規制型神奈川県綾瀬市「綾瀬市再生資源物の屋外保管に関する条例」
自動車ヤードではなく、金属スクラップなど再生資源物そのものの屋外保管を正面から規制対象とした早期の条例です。再生資源物は有価物として取引されるため廃棄物処理法の対象になりにくく、既存の法制度で対応しづらい領域を市条例で補う流れの始まりを示す事例といえます。
分類:B|スクラップ・再生資源物の屋外保管規制型愛知県「ヤードにおける盗難自動車の解体の防止に関する条例」
条例名に「盗難自動車の解体の防止」と明記しており、自動車ヤード規制の当初の目的である盗難車対策の性格を色濃く反映した都道府県条例です。ヤードの視認性確保や取引記録の作成・保存など、他県の条例とも共通する規制の枠組みを備えています。
分類:A|自動車ヤード規制型埼玉県「埼玉県ヤードにおける自動車等の適正な取扱いの確保に関する条例」
ヤード内自動車等関連事業者に対し、事業開始の届出、自動車等を引き取る際の相手方の身分確認、取引記録の作成・保存などを求める条例です。茨城県条例などと同じく公安委員会を規制の担い手とする、都道府県ヤード条例の標準的な形の一つです。
分類:A|自動車ヤード規制型三重県「盗難自動車の解体及び輸出の防止等に関する条例」
解体だけでなく「輸出」の防止も条例名に掲げている点が特徴で、盗難自動車が海外に流出する経路への対応を意識した規制内容になっています。他の都道府県条例と同様に段階的な施行(一部施行→本格施行)を採用しています。
分類:A|自動車ヤード規制型千葉市「千葉市再生資源物の屋外保管に関する条例」
一定規模以上の再生資源物屋外保管事業場の設置について、全国で初めて許可制を導入した条例として知られています。市街化調整区域を中心に増えていた、いわゆる金属スクラップヤードでの騒音・振動や不適正保管による火災など、生活環境への影響に対応するために制定されました。無許可設置には懲役刑を含む罰則が設けられており、規制の実効性を高めた点も特徴です。
分類:B|スクラップ・再生資源物の屋外保管規制型茨城県八千代町「八千代町特定自動車部品のヤード内保管等の適正化に関する条例」
坂東市に続き、茨城県内の市町村単位で施行された自動車ヤード条例です。県条例が既に存在する中でも、地域の実情に応じて市町村が個別にヤード規制を設ける動きが続いていることを示しています。
分類:A|自動車ヤード規制型千葉県「特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例」(通称:金属スクラップヤード等規制条例)
千葉県が都道府県として制定した、再生資源物の屋外保管業を対象とする許可制条例です。屋外における特定再生資源の不適切な保管による環境悪化を防ぐため、事業場の施設基準を定め、違反時の命令・罰則を規定しています。制度開始時点で既に営業していた事業者にも許可取得を義務付けており、都道府県レベルでのスクラップヤード規制強化の転換点となった条例です。
分類:B|スクラップ・再生資源物の屋外保管規制型山梨県「山梨県再生資源物の不適正保管等の防止及び産業廃棄物の適正管理の促進に関する条例」
再生資源物の不適正な保管への対応と、産業廃棄物の適正管理の促進をあわせて一本の条例で定めている点が特徴です。県内で発生していた多量堆積による水質汚濁や悪臭、金属スクラップの崩落・火災といった問題を背景に制定されました。一定規模以上の保管場所には届出制を導入しています。
分類:B|スクラップ・再生資源物の屋外保管規制型埼玉県「埼玉県特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例」
さいたま市・越谷市など県内自治体で先行していた再生資源物屋外保管に関する規制を、県全域に拡大した条例です。金属・プラスチック等の特定再生資源を屋外で保管する事業者に知事の許可を義務付け、既存事業者には期限内の届出により許可を受けたものとみなす「みなし許可」の仕組みも設けています。
分類:B|スクラップ・再生資源物の屋外保管規制型福島県「福島県特定再生資源物の屋外保管の適正化に関する条例」
再生利用を目的に収集された金属やプラスチックを屋外で保管する事業場のうち、敷地面積が100平方メートルを超えるものを許可制の対象とする条例です。火災や崩落、騒音・振動、汚水の流出といった、既存の廃棄物関連法令では対応しにくい問題への対策として制定されました。
分類:B|スクラップ・再生資源物の屋外保管規制型群馬県「群馬県ヤードにおける自動車等の適正な取扱いの確保に関する条例」
スクラップ・再生資源物の屋外保管規制が都道府県単位で相次いで施行される中、2025年になっても自動車ヤードを対象とする条例が新たに制定されていることを示す事例です。ヤード内自動車等関連事業の届出制、相手方の身分確認、取引記録の作成・保存など、他県のヤード条例と共通する枠組みを備えています。
分類:A|自動車ヤード規制型ヤード条例はどのように変化してきたのか
ヤード条例は、2010年代前半、盗難自動車や自動車部品の不正な解体を防ぐことを目的として、千葉県などが自動車ヤードを対象に届出制度を導入したことから始まりました。2010年代後半にかけては、同様の自動車ヤード条例が茨城県・愛知県・埼玉県など複数の都道府県・市町村へ広がる一方、綾瀬市のように金属スクラップなど再生資源物の屋外保管そのものを規制対象とする条例も現れ始めます。再生資源物は有価物として取引されるため廃棄物処理法の対象になりにくく、法制度の隙間を自治体が独自の条例で補う動きが強まっていきました。2020年代前半には千葉市が全国に先駆けて再生資源物屋外保管業への許可制度を導入し、2024年以降は千葉県・山梨県・埼玉県・福島県など、都道府県単位でのスクラップヤード規制が相次いで施行されています。一方で群馬県のように、自動車ヤードを対象とする条例も並行して新設され続けており、当初は「自動車盗難・不正解体対策」であったヤード規制は、いまや金属スクラップや再生資源物といった有価物の屋外保管全般を対象とする、より広い枠組みへと姿を変えつつあります。
