ソーシャルビジネスの可能性〜社会問題は「ビジネス」で解決する時代へ〜

※本文書は私が執筆し、出版社で掲載採用となりました

1.「ソーシャルビジネス」とは何か?

 「ソーシャルビジネス」という言葉を聞いたことはありますか?簡単に言うと、『「社会問題」をボランティアの善意だけに頼るのではなく、「ビジネス」の手法を用いて持続的に解決する』ということです。

 従来のビジネスは、世の中の「不便」や「不満」といったマーケットのニーズを解消し、利益を追求することを目的としています。困っている人がいるにもかかわらず「儲からない」「手間がかかる」といった理由から、一般のマーケットから放置されてしまった領域が「社会問題」です。

 これまでは、そうした問題は国や自治体(行政)、あるいはボランティア団体が担ってきました。しかし、税金や寄付だけに頼る活動は、資金が尽きれば継続できなくなってしまいます。そこで、社会課題の解決策に「収益を上げる仕組み」を組み込み、稼いだ利益を次の支援に再投資して持続可能な形を作る。それがソーシャルビジネスの基本概念です。

2.ソーシャルビジネスのメリットと本質

 この分野を牽引する社会起業家たちの言葉を借りれば、ソーシャルビジネスの本質は「社会の役に立ちたいという思いは、事業化(ビジネス化)できる」という力強いメッセージにあります。

 ビジネスとして取り組むことには、企業側にも大きなメリットがあります。

(1)ブルーオーシャンの開拓: 誰も手をつけていない社会課題は、競争が比較的少なく、新しい市場となる可能性があります。
2)企業価値(ブランド)の向上: 社会貢献に直結する事業は、顧客からの共感や信頼を得やすく、PR効果も期待できます。
    3)人材獲得とモチベーションアップ: 「社会を良くする仕事」は、優秀な人材を引き付け、社員の働きがいにも繋がります。単なる「効率の追求」だけでなく、あえて非効率な部分も取り込みながらビジネスを再設計し、利益を社会に還元する「恩送りのエコシステム」(ボーダレスジャパン・田口一成氏の表現)を作ることが、これからの企業に求められる新しい価値観となっています。

    3.身近な社会問題の例:「空き家問題」

     これらの理論を、私たちの身近な社会問題である「空き家」に当てはめてみましょう。総務省の調査(2023年)によると、全国の空き家は約900万戸に達し、空き家率は13.8%と過去最高を更新しています。

     放置された空き家は、倒壊や火災のリスク、雑草や害虫の発生など、地域の大きな不安材料となります。所有者にとっても、活用できないまま固定資産税や維持管理費のコスト負担だけが継続しているケースが少なくありません。

     こうした、いわゆる『負動産』を、利益を生む仕組みに作り変えることができれば、それは立派なソーシャルビジネスです。例えば、空き家をDIY等でリノベーションし「カフェ」や「シェアハウス」に変身させる。あるいは、平時は「ペット同伴可能な民泊」として収益を上げつつ、災害時には地域の「ペットと家族の緊急避難所」として開放するといったモデルです。

     ボランティアではなく、しっかりと事業として利益を生み、次のプロジェクトにお金を回していく。これがソーシャルビジネス成功のカギと言えます。

    4.ソーシャルビジネスの難しさ(デメリット・課題)

     しかし、実践には高いハードル(デメリット)も存在します。最大の難しさは「マネタイズ(収益化)」です。

     通常のビジネスは、サービスを提供した相手(顧客)から直接お金をもらいます。しかし社会問題の場合、「サービスを本当に必要として困っている人」と、「お金を払える人」が一致しないことが多々あります。

     また、法律、権利関係、地域住民、行政など、非常に複雑で入り組んだ利害関係を調整する手間がかかり、通常のビジネスに比べて「非効率」になりがちだという課題もあります。

    5.複雑な課題を解きほぐす「行政書士」の役割

     こうした複雑な関係性を整理し、安全な事業ネットワークを構築する伴走者であり、時にプロデューサーの役割を果たすのが私たち「行政書士」です。皆様がソーシャルビジネスを立ち上げる際、以下のようなサポートが可能です。

    1)「契約設計」と「リスク管理」: 空き家の所有者、事業の運営者、ボランティア参加者など、関係者間の権利義務を法的に整理し、全員が安心して参加できる環境を構築します。
    2)「許認可申請」と「最適な法人設立」: 民泊などを合法的に進めるための許認可や補助金申請、そしてNPO法人や一般社団法人など、事業目的に合わせた最適な法人設立を担います。
      3)専門家ネットワークの「ハブ(調整役)」: 登記(司法書士)、測量(土地家屋調査士)、税務(税理士)など、他士業と連携し、問題の交通整理を行うコーディネーターとして機能します。

      6.まとめ

       これからの時代、少子高齢化や人口減少が進み、国や行政の力だけでは解決できない社会問題はどんどん増えていきます。それは裏を返せば、皆様のビジネスの出番が無限にあるということです。

       これから起業を目指す方はもちろん、すでに事業を営まれている方も、本業で培ったノウハウや技術、所有している遊休資産も、視点を少し変えるだけで、社会問題を解決するソーシャルビジネスの種になるかもしれません。

       「社会を良くしながら、利益も生む」。困難ではあっても、社会的意義と独自性を持つ事業です。

       そんな新しいビジネスの形に興味がありましたら、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。行政書士は、構想の段階から「かかりつけ行政書士」として皆様に寄り添い、一緒に汗をかきながら、全力でサポートいたします。